教銘舎の太田です。こんにちは。

 

 

先日打ち合わせの為に富山市の事務所を訪れた。

 

塾が始まる時間を逆算して、お相手の都合も考えて開始時間を設定。

 

 

色々と確認したいことがあり出発すべき時間ギリギリまでかかってしまった。

 

 

10分あればと思う時は誰にでもあるだろうが、後10分あろうが20分あろうが実は同じであろう。

 

どれだけ迷っても決める瞬間は正に刹那なのだから。

 

 

お礼を申し上げて早々に事務所を出た。

 

 

気持ちだけが焦る帰り道、昔の事を思い出した。

 

 

 

当時私は13歳。

 

 

 

子どもも親も何だか借りてものみたいな恰好で列席した入学式を終え、

 

まだ4月だというのに顔を火照らせた喧騒も冷めやらぬ中、

 

席がたまたま前になった上野はハニカミながら私にヨロシクと言った。

 

 

ニカっと笑うと歯並びの悪さが愛嬌に変わる人懐っこいやつだった。

 

 

私が剣道、彼が柔道を選んだことによって、

 

毎日の部活は二人とも学校から離れた武道館まで行かなければならなくなった。

 

 

同じ班に振り分けられたり、いくつかの偶然が重なって

 

梅雨の足音がそこまで聞こえる頃には、お互いの家を行き来する程に仲が深まっていた。

 

 

 

ある日の早朝、池の畔で待ち合わせをした。

 

 

 

二人共通の趣味である鯉釣りをするために。

  

 

待ち合わせたのは早朝6時。

 

 

朝靄を大きく吸い込みながら自転車で駆けていった。

 

 

田んぼの干害用溜池であったのであろうが、

 

道から見れば古墳のように盛り上がった先に池があった。

 

 

その後ろには森が広がっており、生い茂る草木を踏み分けて入っていくと

 

野生動物の白骨が散乱していたり、町ではめっきりみなくなったような大型の昆虫が住む世界となる。

 

 

 

これまで何度かそこで待ち合わせをしたが、彼は遅刻をしなかった。

 

 

だがその日に限っては待てども待てどもやってこない。

 

 

今から思えば先に釣りをしていればよかったのだろが、

 

私たちは釣りで競うようになっていたので、抜け駆けするようで憚られた。

 

 

当時携帯もポケベルも持っておらず、

 

ただ相手を信じて事故や怪我がないことを祈りながら待つことしか出来ない。

 

 

人口10万人にも満たない街に蜘蛛の糸のように張り巡らされたスピーカーから

 

正午を知らせる音楽が鳴る頃になって彼は大汗をかいてやってきた。

 

 

遅刻の理由なんてなかったような気がする。

 

 

私は彼がやってきてくれたことが嬉しくて、

 

彼が事故にあったり怪我をしていない事が嬉しくて、

 

そしてもう待っていないかもしれない私との約束を守る為に、

 

息を切らして駆けてきてくれたことが何よりも嬉しくて相手を責めるようなことは無かった。

 

 

 

ちょっと予定より遅れたケド、折角だからと釣りをして帰宅したような気がする。

 

 

 

彼とはその後もずっと仲が良かった。

 

 

今なら携帯電話で『ごめん、寝坊した。少し遅れるよ。』などと簡単に連絡が取りあえるが、

 

そういった物の無い不便な時代だったからこそ、相手を思いやる心を持っていられたのかもしれない。

 

 

 

当時の自分と比べて今の自分はどうだ?

 

 

歳ばかり重ねて偉くもないのに偉そうな顔をして。

 

 

人と待ち合わせをせずに時間と待ち合わせをしていることはないか?

 

 

 

 

 

 

 

 

…………………

 

 

 

 

だがしかし!!

 

 

仕事に遅刻した時の言い訳としてはチト苦しいか?と思い直し、

 

アクセルを踏み込んだ()

 

 

 

 

それでは。

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